桃の節句(ひな祭り)に桃が咲いてないのはなぜ?

1_ひな祭り

こんにちは。エストリンクス・PS部の相川です。
立春はとうに過ぎたにもかかわらず、まだまだ寒い日が続きますね。みなさまいかがお過ごしでしょうか。私はというと、暖かいと言われる静岡にいながら、まだまだカイロ(2枚貼り)と半纏が手放せません。

 
 
とはいえ、2月も末。梅の花が咲く様子が、あちこちで見られるようになってきました。春の気配はもうすぐそこです。そのうち桃や桜も咲き始め、どんどんにぎやかになっていくでしょう。
 
 
ところで、3日後に迫ったひな祭りは、「桃の節句」と呼ばれています。桃の盛りは、一般的に3月中旬~4月中旬。ようやく梅が咲いたこの季節に「桃の節句」とは、なかなか気が早いのではないでしょうか。なぜひな祭りが「桃の節句」と呼ばれているのか、気になったので調べてみました。
 
 

ひな祭りと桃の花

2_雛人形と桃の花

ひな祭りといえば、内裏雛と呼ばれる平安衣装をまとった人形と桃の花を飾り、女の子の成長を祝う行事です。お祝いの作法は地域によって違いがあるようですが、一般的に、ちらし寿司やハマグリのお吸い物、ひなあられなどの縁起物をいただきます。現代ではあまり見かけなくなってしまいましたが、昔は桃の花びらを浮かべた桃花酒も一緒に飲まれていました。
 
 
また、だれもが知っている童謡、「うれしいひなまつり」(作詞:サトウハチロー)にも、「おはなをあげましょ もものはな」の歌詞があります。
単に「桃の節句」と呼ばれているだけでなく、実際にひな祭りと桃の花はセット扱いなんですね。

 
 

桃の節句と呼ばれる理由

ひな祭りが「桃の節句」と呼ばれているのには、大きく二つの理由があります。

 

(1) 桃が縁起の良い植物だから

3_桃の実

古くから桃は「厄除け」と「健康長寿」の象徴です。これが、女の子が何事もなく、健康に過ごせるようにと願うひな祭りの趣旨にぴったりだったため、桃が好んで用いられるようになりました。
 
 
「厄除け」の効果に関しては、桃から生まれた男の子が鬼を退治する、「桃太郎」のおとぎ話が有名です。桃が持つ邪気を払う力は、古事記のエピソードが起源と言われています。イザナギが妻・イザナミを黄泉から連れ戻そうとして失敗、怒らせてしまい、かかる追手から逃げる際に3つの桃の実を投げつけて撃退した、というお話です。
 
 
この桃はイザナギから感謝され、オオカムヅミの名をもらって神に昇格しました。
なお、平安時代、宮中で行われる追儺(簡単に言うと、盛大に「鬼は外」をする厄除けイベントです)にも、桃の木でできた弓と杖が用いられています。

 
 
そして、桃は「健康長寿」をもたらす木でもあります。こちらは主に中国からやってきたイメージです。万病に効くとされる仙薬の材料に桃が使われているほか、中国の女仙・西王母が持つ桃は3,000年に一度しか実をつけず、これを食べると不老不死になれると言われています。七福神の一人で、長寿をつかさどる寿老人も、桃を持った姿です。

 

(2) 3月3日が桃の咲く季節だったから

4_桃の花

ひな祭りの原型になったとされる「上巳の節句」や「流し雛」は平安時代に盛んでした。
このときに採用されていた暦は、太陽太陰暦。現在の太陽暦とは違い、月の満ち欠けで1か月を定義する暦法です。

 
 
太陰暦の1か月は29日~30日と、太陽暦よりもやや早いサイクルで月が替わります。そのため、今とは日付に対する季節感がずれているのです。太陰暦は、日付に1~1.5か月を足すと、太陽暦の感覚に近くなります。つまり、ひな祭りができた頃の3月3日は、今でいう4月初旬。桃がちょうど満開になる頃です。
 
 

3月3日である理由

5_3月3日

では、明治時代に太陽暦に暦を変えたとき、一緒に行事の日取りも変えればよかったのでは?と思ってしまいますが、3月3日という数字にも意味があったため、暦が変更されても日取りは変わりませんでした。
※地域によっては、1か月後の4月3日にひな祭りを行うそうです。

 
 
ひな祭りの起源である「上巳の節句」は、3月の最初の巳の日(上巳)に祓と宴をする行事です。「最初の巳の日」というのは、今でいう「7月第3月曜は海の日」のようなもので、日付が決まっているものではありません。
しかし、中国の有名な書家・王義之の作品に、3月3日に上巳の宴を行った様子が描かれていたことや、「3」という数字の神聖性から、のちに3月3日に固定されました。

 
 
神聖性というのは、陰陽思想によるものです。3をはじめとする奇数は「陽の数」であり、古くから縁起の良いものとされてきました。なかでも3月3日のように陽の数が重なる日は、非常に大切にされていたため、暦が変わっても日付をずらすことはしなかったのです。これについては、5月5日の端午の節句や7月7日の七夕の節句なども同様です。

 

わが子の幸せ>季節感

6_雛人形と女の子

女の子の健康を願い、厄を払うというひな祭りの性質上、桃の花のパワーにはぜひあやかりたいものです。しかし、3月3日という日付がすでに広く浸透していたうえに、厄払いの意味でも、陽の気の強い日取りをずらすことはできませんでした。
 
 
その結果、従来通り、3月3日のひな祭りが続けられているというのが、桃の節句に桃が満開ではない理由のようです。昔の人の、子どもの幸せを願うためなら季節感すら犠牲にする強い気持ちが伝わってきますね。
 
 
もともと、上巳の節句は女の子限定のお祭りではありません。大人の女性も男性も、今年のひな祭りは健康厄除を願って楽しんでみてはいかがでしょうか。
それではよいひな祭りを!